民法 占有権。取得から消滅まで
占有権。取得から消滅まで
その3 占有権とは
占有権とは、人が物を事実上支配している状態を保護するための権利
→私人間の自力救済を認めると、社会秩序が乱されるため、このような権利がある
占有権は自己のためにする意思、つまり、占有意思を所持することによって取得する(180条)
|
占有の譲渡(占有権移転の合意)
現実の引渡
占有権の移転と同時に所持も移転(182条-1)
(ex.売買)
簡易の引渡
占有権を取得した者がすでに所持している(182条-2)
(ex.賃借人の買い受け)
占有改定
占有権だけが移転(183条) 所持人はかわらない
(ex.譲渡人が譲渡した後も自分で持っている場合)
指示による占有移転
占有権だけが移転(184条)
(ex.倉庫にある物を売って、売った後も買主がそのまま預ける場合)
占有権の承継
承継の効果
- 「自己の占有のみ」
- 「自己の占有に前主の占有を併せて」
この場合、前主の占有の瑕疵も引き継ぐ(187条-2) - 1.2のどちらかを主張
→取得時効を援用するときに大きな意味を持つ
即時取得(善意取得)(192)
動産取引の安全を守るため(真実の権利者を犠牲にするものである)処分権のない譲渡人を、処分権があると信じた取得
要件
- 目的物が動産であること
- 取引行為による取得であること
- 相手方に処分権がないこと(動産の借主や預かり主)
- 平穏・公然・善意・無過失の取得であること
- 取得者が動産を自ら占有すること
(現実・簡易の引渡は成立するが、占有改定では認めない)
特則
- 盗品・遺失物のときは2年間だけ目的物の返還請求ができる(193条)
「無料で返してくれ」と言える(個人から買った第三者に対して)
代価を支払わなければならない(競売・商人から買った第三者に対して) - 横領されたものは返還請求できない
権利の推定
占有者は占有物に対して適法な権利を持っていると推定される(188条)
→所有権・賃借権・受寄者の権利など
占有訴権
占有保持の訴
占有を妨害されたとき、妨害の停止及び損害賠償の請求ができる(198条)
占有保全の訴
妨害されるおそれがあるとき、妨害の予防、または、損害賠償の担保を請求できる(199条)
占有回収の訴
占有を奪われたとき、占有を奪われた物の返還及び損害賠償(1年以内)を請求できる(200条-1)
占有権の消滅
占有権の消滅事由(203条)
- 占有の意思を放棄すること
- 占有者が所持を失うこと
代理占有の消滅事由(204条)
- 本人が占有代理人によって占有される意思を放棄したとき
- 占有代理人が本人に対して今後は自分または第三者のために保持する意思表示したとき
- 占有代理人が占有物の所持を失ったとき
(代理権が消滅しても占有代理人が占有物を所持する限り代理占有は続く)
民法物権解説へのリンク
関連ページ(広告が含まれています)